公的機関のハラスメントでは調査委員会を設置するの?

公務員の場合、ハラスメントの加害者への懲戒処分は、知事や市町村長などの任命権者の裁量に任せられています。公務員は簡単にクビにはできないので、懲戒免職などの重い処分を科す可能性がある場合や、ハラスメントの有無を明白にするために、調査委員会が設置されることが多いです。ハラスメントを行ったというお墨付きを得るためです。しかし、調査の結果、「ハラスメントは無かった」「ただのコミュニケーション不足」ということになるケースもあります。この場合は被害者に救済処理はなされず、放置または逆に注意されることもあり、つらい立場になります。

 

調査委員会が設置された場合、結果が出て加害者に処分が科されるまで、半年、場合によっては1年以上かかることがあります。表面的にはきちんと対処した結果と思えますが、その間の被害者の気持ちを考えてみて下さい。ラスメントのニュースを見る時に私が一番注目するのは、「被害者が訴えてから処分が科されるまでの期間」です熊本県山都町の町役場で起こった以下のハラスメントを例に挙げます。

 

(読売新聞オンライン 2022/8/28付)
男性職員を大声で 叱責しっせき するパワーハラスメントを行ったとして、熊本県山都町は26日、能登哲也副町長(62)を懲戒免職処分とした。 発表によると、男性職員は昨年7月、うつ病を理由に休職した。昨年12月、上司に手紙で「副町長からパワハラを受けていた」と相談し、町は3月、第三者調査委員会を設置し、関係者に聞き取り調査した。
 能登副町長は元県職員。調査委は、就任した2019年7月から2021年7月にかけ、業務を問い合わせたり、決裁文書の作業をしたりする際、男性職員を大声で叱責したことなど3件がパワハラに当たると認定した。
 町は「公職上の信用を失うべき行為があった」として処分を決めた。男性職員はすでに復職しているという。梅田穰町長は「絶対にあってはならない事件が発生し、誠に遺憾。監督が行き届かず、深くおわび申し上げる」とコメントした。

 

一見、町はきちんと対応したかのように見えますが、上司に手紙を書いてから3カ月もたって調査委員会を設置。懲戒処分を決定したのはその約半年後です。ハラスメントの対応は迅速に行うのが鉄則ですが、上司に手紙を書いた時期から数えると、たった一人の加害者に対して約10カ月もかかっています。なぜ長くかかるのでしょうか。通常の業務とは違う余計な仕事のために要領が悪くかつ関係者の腰が重かった、いやいやながら行っているためスピードが遅かった、ということでしょう。また、委員の選定に時間がかかったのかもしれません。ハラスメント対策には被害者への共感が第一で、だから迅速に解決しなくてはならないのです。被害者が訴えてから解決までの期間で職場の本気度がわかります。

 

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2022年11月06日